2015年 バングラデシュ視察記 8 by 伊勢祥延

8月16日

9時ホテルをチェックアウト。この時点から軍の諜報局の人間が監視同行する。
10:30チャクマ族の村GILACHARI UNION(郡)HAJACHARI(ハジョチョリ)村へ。

寺院にて僧侶5人及び村人男女50人以上の参加。

ビプロップの知人で郡のチアマンAmoraJibinさんも同行しスピーチ。

95HAJACHARI(ハジョチョリ)村

96HAJACHARI(ハジョチョリ)村97HAJACHARI(ハジョチョリ)村 99HAJACHARI(ハジョチョリ)村 98HAJACHARI(ハジョチョリ)村100HAJACHARI(ハジョチョリ)村

この村は昨年セトラー(ベンガル人入植者)による焼き討ち事件が起こり被害を受けている。約10箇所でレイプ事件が起きた。農作業に出ている時に狙われたそうだ。そのため地元の武装ゲリラが関与し治安の維持に関わってるという。それをしないとまたいつ襲われるか分からないからだという。

101ふるまってくれてランチ 102ふるまってくれてランチ

今回の政治闘争や最近焼き討ち事件のあったラガマテ県の危険地域と、カグラチョリ県の訪問に関し、安全確保のため軍や警察に同行を依頼する必要があった。

外国人(伊勢)がいるためリスクが高いこと、さらに各チェクポイントをスムーズに通るためである。

危険な地域に入るにあたり、身を守るために必要な処置として事前に打ち合わせてあった事だ。が、そのため当局の人間の前で、会合中、政治の話しや、セトラー、ベンガリー、差別などのセンシティブな用語は、使わないようアウンから忠告されていた。

実際、軍の監視官は移動中、四方僧伽の事を根掘り葉掘り聞きメモしていた。

12:30

チャクマ族のUPPOZIRA UNION(郡)SARIDHAS(シャリダシュ)村。90家族 粗末な仮寺に村人60人程、僧侶と土地の名士らしき人の演説も行なわれる。

仏陀バンクとは全く関係ない話しをしてるようだ。この村は8ヶ月前セトラーによる焼き討ちがあり民家、寺、商店が破壊炎上しており、一部残骸が残っていた。

この村でも村人が並んで出迎え花束を贈呈されるなどセレモニーが行なわれたが入った瞬間から殺伐とした暗い印象を受けた。

村には小さな軍の監視用テントがが設置されており、3人程の武装した兵士が見張っていた。

その中の一人は会合中一部始終を監視、朝から同行している軍の諜報局と並んで座っている。

103SARIDHAS(シャリダシュ)村 107SARIDHAS(シャリダシュ)村 106SARIDHAS(シャリダシュ)村 105SARIDHAS(シャリダシュ)村 104SARIDHAS(シャリダシュ)村

僕はここで痛恨のミスを犯してしまった!仏陀バンクの説明中、

話しに夢中になり、つい当局の人間がいる事を忘れて、これまでの村のように四方僧伽の募金用リーフレットを出してしまった。気が付いたときは遅かった。撤収しようとしたがすでに遅くアウンに止められた。

リーフレットを目にした軍の兵隊と諜報員は、暫くの間凝視したかと思うと何やらリーフレットについて話しをしている。そして念入りに何度も写真を撮り複写した。

これは僕自身が責任者として製作にかかわり、つい先月出来上がったばかりの仏陀バンクの募金を目的とした印刷物。

リーフレットには、この地域で最も繊細な問題、軍や警察が隠蔽している焼き討ちにあった家屋と寺院の写真がばっちり乗っている。

具体的な固有名詞は掲載してないが、一目で問題定義している事は分かるはずだ。

右端が軍の諜報部員、そのとなりが国家警察

右端が軍の諜報部員、そのとなりが国家警察

 

中央が常駐している軍の監視場の責任者

中央が常駐している軍の監視場の責任者

 

今後、四方僧伽の活動、仏陀バンクにどう影響するか解らないが、確実にマークされる事になっただろう。

なぜならジュマネットチェレメイなど政治問題にかかわる事で厳しく入場が制限されてる海外の人権団体の前例がたくさんあるからだ。

アウンからも、迂闊にリーフレットを出さないように、状況を良く見て判断するように強く注意される。この事は今回の訪問で最も後悔し口惜しく思う出来事である。

アウンは、「これはビブロップのミスでもある。こんな問題のある村は、公に集会などするべきじゃない!まずはこっそり訪問し様子を見るのが先決であるべきだったと、、。」なぜこの村を推薦したかに疑問を抱いた。これは下手をするとローカルNGOのエコデベロップメントやアシカファンデーションも巻き込まれかねない、、。

想定される批判は、「バングラデシュにおいて、なぜジュマの人間だけをサポートする、なぜ仏教徒だけを」である。

アウンのアイデアで、今後活動を邪魔されないためにも、対策として我々はジュマや仏教徒だけじゃなく、ベンガル人のサポートもしている形をとり、CHT各県の貧しいイスラム教徒の地域の無償サポートをする事で、なんとかこの問題を回避出来るだろうという。

それにしてもリーフレットにイスラム、セトラー、軍や警察、政治批判などの言葉をあえて一切使わなかった事は不幸中の幸いだった。

ちなみにカレンダーには思いっきり書いてある。

リーフレット

リーフレット

 

4:00

いよいよも問題のカグラチョリ県にはいった。カグラチョリ県は他の2県と違いチャクマ、マルマ、トリプラ族等が、それそれ均等に暮らしている。

ホテルにチェックインして間もなく地元の警察官が来て、四方僧伽や仏陀バンクについてあれこれ質問される。

この夜ビプロップからの連絡で、総合ミーティングに大きな障害が起こる事となった。それはリーフレットを入念に複写していた例の軍の諜報員が、総合ミーティングを監視にやって来る事が解った。

アウンと僕は頭を抱えた。監視人の前ではブッダバンクの説明も、勉強会も情報公開も、お金の受け渡しもすべて、大きなりリスクを伴う。

ただピブロップの持つアシカプロジェクトの集会場で開催すれば、来ないかもしれないとアウンは言う。

開催出来ないよりは遥かによいが、それじゃ味気無いじゃないか!村を訪問した時からイメージしていた、みんなで楽しくカピタイ湖をボートで渡り、美しいディグリバ村でのセレモニー、青空の下で各地から来た参加者の交流。夢にまで見た特別な日。

そこでいいアイデアが浮かんだ、両方でやればよい!監視されるであろうディグリバ村では、交流とセレモニー、僧侶による読経と説教、そしてとランチタイム。その後、集会場に移動してスライドショーにプレゼンと指導その他。そして原資や追加融資の受け渡し。

このアイディアをアウンとビブロップに伝え賛同を取り付ける。

諜報部員になぜ集会場でやる必要があるかと聞かれた場合、「パワーポイントを使うので」と言い訳出来る。そのためのスライドショーである!

しかしまだ安心出来ない、アウンに聞いた「軍の諜報部員がもしどうしても集会場に来たいと行ったら?」「そのときは賄賂で追い返すよ」とアウンは自信たっぷりだ。金額は少ないとだめかも、との僕の問いに、「封筒に入れるから中身は分からない」アウンは答えた。連中は金が欲しいから大丈夫だと言う、、。

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