伊勢祥延 の「Calendar Photoの追憶」10

2008カレンダー Inner Soul 2月      ザオ族の少女

べトナムの北部、美しい山岳地帯に、モン、ザオ、ザイなどの少数民族が多く暮らす。

北部の街サパでガイドを雇い、トレッキングを兼ねた数日間の撮影旅に出た。山々の間に美しい棚田が広がり、深い渓谷に川や滝などを望みながら部族民の木づくりで素朴な家に泊まる。日々の生活を観察しながら、静かなひと時を過ごす。澄んだ空気に夜の星空、静寂という言葉がぴったりな深夜。朝晩は冷えるが皆で暖をとり、冷たい水が気持ちいい。質素な生活の中に豊かな心の交流、モダン社会やマティリアスティックな世界から遠く引き離してくれる。

しかしそれとは反面、部族によっては非常に保守的で写真を嫌う人も多く、不快な顔をされたり、あからさまに拒否される事も多々あり、肖像撮影が目的の自分としては、へこむ場面も多かった。双方とも悪気がないだけに複雑な思いである。
そんなわけで、ろくな写真が撮れておらづ、おまけに何日もの移動で体力も無くなり足も痛い。終盤にザオ族の家族の家に泊まった時のこと、「ただいま~」とそこの娘が学校から帰って来た。はっとする様な美しい少女だった!純粋無垢な透き通る目、腰まである長い髪、はにかみながらも、まっすぐ見つめて来る真摯なまなざし。

ことごとく撮影拒否され続け自信を失いかけていた私だが、「写したい」という押さえきれない撮影欲だ背筋、胸元からわき上がる!と同時にまた冷たく断れるのではという恐れに取り憑かれてしまっていた私は、自等言い聞かせた、「この子の写真を撮らんで何の写真家だ」それほどフォトジェニックで彼女は輝いて見えた!
これまでのトラウマを振り払うように勇気を振り絞り、まるで嘆願するかのように尋ねた「君の写真を撮らしてほしい」

「もちろん私で良かったら」と満面の笑顔で答えてくれ、両親も賛成してくれた。

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そして生まれたのがこの一枚だった。まさに彼女は僕の女神だった。それまでの屈辱と挫折から救ってくれたのだ。

翌日ぼくは彼女と供に学校を訪問し山の子ども達と交流を深めた。このザオ族の少女との出会いは貴重な思い出として今も薄れることはない。

事務局員紹介 仏陀バンクプロジェクトリーダー 伊勢祥延(いせよしのぶ)

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