伊勢祥延 の「Calendar Photoの追憶」15

2008カレンダー Inner Soul 7月img_2660

イエメンの山岳地方は、アラビア半島の先端に位置する最も高い所にある。岩山の尖ったの断崖絶壁、こんな所にどうやって建てたんだろうと驚く程険しい所に村があったりする。敵に攻められないようにだろう,アラビアンナイト、あの千夜一夜物語に出てきそうな景観である。
贅沢にも一人で4WDとドライバーをチャーターした私は、そんな村を立ちよりながら旅を進めていた。
そんな小さな村で偶然出くわした結婚式、そこで驚くべき光景を見た。写真的に魅力に満ちた世界、好奇心をくすぐられ、私は飛び入り参加することにした。
この男性は新郎のお父さんである。結婚式では男女を厳格に分け、男は外、女は室内で別々に行なうらしく女性の姿は全く見当たらない。両家の男達は写真のように向かい合って両側に立ち、剣を抜き銃をかまえ(主にカラシニコフ)祝いの舞を踊る。そう「剣の舞」だ!さらに空に銃口を向け、いっせいに実弾を打ち放つ。踊っては撃つ、何度も何度も踊っては撃つ。
見よう見まねで踊る私の足下に楽莢が火薬の臭いとともに飛んで来る、拾ってみるとかなり熱い。

実弾の音というのは意外と乾いた軽い音がする。新郎が彼の持つピカピカのカラシニコフを私に手渡し「撃ってみなよ」とささやく。ずっしりと重く黒ずんだ鋼鉄の固まりは、モデルガンとはまるで違う生っぽく不気味な質感だった。銃口からはまだ煙が揺らめき、きな臭さが鼻に付く。丁重にお断りしたが、正直いまとなれば少し後悔してる、、。

男達がジャンビア(刀)を身につける習慣が残るのは、アラビア半島で唯いつ、ここイエメンだけだ。そう、これは誇り高きアラビアの戦士の証なのだ。銃火器は財産であり力の証明、男達が縁を結ぶ儀式に祝砲をならし、それらを持ち出し見せ合う事が敬意を現すことなのだろう。

むかし日本の侍いは平和な時代でも腰に刀を差していた。江戸時代には竹光に代へ工夫していたように、ジャンビアにも今は鋭い刃は付けていない。そんな時代は武装イコール侍、戦士の正装でもあったはずだ。

欧米諸国はこの習慣を時に非難するが、日本が失ってしまった以前からの習慣を彼らはかたくなに守っている事に敬意を抱く。
そしてかっこいいのである。

イエメンはこれまで訪れたどんな国より別世界に連れて行ってくれた。そんな遥か遠い遠い世界で、もっともに日本的な習慣を見たのである。

 

事務局員紹介 仏陀バンクプロジェクトリーダー 伊勢祥延(いせよしのぶ)

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