バンク・オブ・仏陀の道2012 Vol.5

『ランガマテ県ラジャストリ地区、ナランギリボルパラ村』

 

同じ日、もう一カ所のブッダバンク地ナランギリボリバラ村を訪問

する。

そこへ行くにはまずランガマテ市から車で2時間ほど走りラジャストリという地域に移動する。そこからナランギリボルパラ村へは山道を徒歩で往復16キロ、2年前へろへろになりながら歩いたあの難所である。(CSミッションバングラディシュ2010秋NO’5参考

今回は関係者など合わせて5人での訪問になるためジープを使って登ると聞き、ほっとしていた。

40年前のトヨタというからそう楽観はできんが…!

 

ところがである、昨夜降った大雨のためジープでも行くには困難であると警告が入った。そのため従来どうり徒歩で行かなければならなくなってしまった。

だがアウンや上川氏はその難関さを知らないため行く気満々で余裕って感じでいる。自分は以前より明らかに体力が落ちてる。そのうえこの時期は気温も前回よりはるかに高い。村に着くには、アップダウンの多い険しい山道をひたすら歩くことになる。道中橋の無い大小の川を3つほど越える。そのうちの一つは荷物を頭に載せながら腰まで水に浸かることになる。

あの時先頭を歩いていたスノモジュテ僧侶はちょこちょこ休憩して遅れる俺に向かって「すぐそこすぐそこ」と言っていたが、やつらのすぐそこは軽く10キロ先にある!

おそろしい事にこちらの僧侶は毎日10キロぐらいは普通に歩いてるのである。

さすがは修行の身。体も無駄な肉は一切無いという感じの僧侶が多い。

(37)ナランギリボリバラ村に向かうく途中の川(2010年撮影)

037ナランギリボリバラ村に向かうく途中の川(2010年撮影)

(38)ナランギリボリバラ村(2010年撮影)
038ナランギリボリバラ村(2010年撮影)

(39)ナランギリボリバラ村にて(2010年撮影)
039ナランギリボリバラ村にて(2010年撮影)

はたして日本の僧侶の中に、歩いて移動する人はどれだけいるだろうか?それどころか公共の交通機関でも見たことないな~ひょっとして着替えてるのかな、、?

それはともかく、前回歩いたときは、翌日一日中横になりへとへとの体を休める時間があった。

今回はタイトなスケジュールがびっちり組まれているためそんな余裕はない。

…ヤバイな~へたしたら脱水症状と過労で倒れるぞこりゃ、、。

前回一緒に行ってくれたASHIAKのスタッフも同じ意見だったため、アウンにそのしんどさを伝えてくれた。

そこで僕からの提案「村人が山奥から降りてくる、と同じにこちらは山奥に向かって登る。で中復で落ち合うってのはどう?」

「決まり。それこそジャパニーズアイデア」とアウン達が感心したように言う。

そうかな~誰でも考えつきそうだけど、、。

…内心は半分の距離でもまだかなり不安…

ところが幸か不幸か先の滞在で時間が押してしまい、さらに移動中の交通事情もあって到着が大幅に遅れてしまった。

先方からはまだかまだかの催促、とうとうじれた村人は山の裾野まで下りて来てしまった…。そしてラジャストリにあるシュノモジュテ僧侶のお寺で落ち合った。

村の受益者ほぼ全員が来てくれて、出迎えてくれた。

(12)ラジャストリのお寺と僧侶
040ラジャストリのお寺と僧侶

(41)ラジャストリのお寺にて

041ラジャストリのお寺にて

90世帯の小さなチャクマ族のナランギリボリバラ村

担当・シュモンタジュティ

出席、上川、伊勢、アウン、クラスミテミ、僧侶2名(シュモンナジュティ  アジャピオ)、村人13

69000タカの原資  12名に貸し出し ー一年後全員が一括返済 10%のブッセー 新たに一名追加し13名で継続

                   上川氏のメモより

 

(14)受益者 の村人と対話
042受益者 の村人と対話

(43)スノモッジュテ僧侶と寺の中
043スノモッジュテ僧侶と寺の中

当初から懸念していた年に一回の返済。その理由は作物などの収穫が年に一回で、その時しか収入は見込めないためである。

懸念は的中し、一年後にまた同じメンバーが同じ額を借りるという最悪の結果である。

これは常識から考えて、元金の返済は一切無く、期限が切れる日に合わせ、全額返済した形で同じ額を同じ人間に同時に貸出すことにより相殺する。いわゆるサラ金業者などがよく使う手口だ。

かなりBOBの考えとは外れている。

と!心の貧しい俺はそう決めつけてかかっていた。

ところがである!それはしくみを理解していなかっただけだったのだ。12名が融資を受ける。一年後いったん全額返済し、そこから発生した布施を利用し新たにもう一人を増やす。昨年借りた12人と合わせ貸し出す。来年は新たに増えた受益者を入れ計13人から布施を集め、そこから新たにまた一人もしくは2人と増やしていく。年を重ねながら少しづつ元金と受益者を増やして行くやり方だ。

彼らはそういう仕組みだと思っていたようだ…。

問題は単純なことだった。その証拠に彼等はブッダバンクの原資、さらに布施も合わせた総額のすべてを持参し、僕達に目の前にその現金を差し出してよこしたのである!

…彼等はひょっとして我々が集金!原資及び布施を撤収にやって来たと思っていたふしもある。

なんとイノセント(罪のない)なひとたちであることか、、!

反省、、。俺と言う人間はなんて貧相な心根なのか。世間に染まったくだらない常識にとらわれ、狭い物差しで人を判断している。

僕たちもアウンも問題がないと共通の意見。彼らは理解すればきっとうまく回していくだろうと感じ取った。

お金を押し返し「貴方達の善意に感謝します。どうか今後もこのお金を有意義に役立てて下さい。そしていずれ同じように困っている近隣の村々に渡して下さい」

と伝えたのだった。

山奥深いナランギリボリバラ村では、この日僕達の訪問のため、貴重な野生のイノシシを一頭潰し、特別料理をこしらえて、村を上げての歓迎の準備をしていた。

そんなことも知らずに、こちらの勝手な都合で訪問できなくなったうえに村人を一時間以上も歩かせ待たせてしまった。

彼らは料理の代わりにと、たくさんのマンゴーとジャックフルーツを持参しごちそうしてくれた。美味しい~!

…心から感激を覚えた…

本来は事務局の意向もあり追加金はしない事に決定していた。だが彼等の善意に胸打たれた我々は、それにたいし何かの形でお返しがたいと思う…。

それが人情というものであろう。

そこで後日話し合い、少額だが気持ちとして一万タカ(1万円)の追加金を決定した。今僕達に出来る事はそれぐらいしかないのだから…

後日、アウンが村を訪れサポートしてくれることとなった。現場の臨機応変さが大切なのである。

同行した事務局長の上川氏はこの日、現場を訪れる事がいかに大切

かをしみじみ語った…。

(44)フルーツの準備中
044フルーツの準備中

(45)ナランギリボリバラ村の受益者と記念撮影

045ナランギリボリバラ村の受益者と記念撮影

(46)見送りしてくれたラジャストリの尼さん達

046見送りしてくれたラジャストリの尼さん達

(47)見送り

047見送り

『BOBショップ構想』

ナランギリボリバラ村の住人に新たな構想、BOBショップ

(バンク•オブ•仏陀の店)について提案を行なった。

BOBショップとは、

その前にこの村のおかれている厳しい現状について話さなければならない。

村での主な産業は野菜や果物などの収穫であるのだが、それを販売するためには近隣の大きな町まで出向いて行って売らなければならない。

バンガリハリス•ユニオンロという街がある。その距離村から4時間、徒歩で重い作物を背負って運ぶという過酷なものだ。

朝5時に村を出て遅くとも午後2時には街を出て村に引き返さなければいけない。

じっくり値段交渉する時間も販売する時間もない。さらに作物を持ち帰る事は鮮度が下がだけじゃなく、重い作物を背負って山道を登るのは二重苦である。

街の商人は、その事をよく知っているので時間ギリギリにやってきて、足下を見て値を下げ買いたたく。村人はそれを知っていても売るしかない。

こんな不公平な関係がこの土地ではあたりまえにはびこっている。CHT(広陵地帯)では、どの町に行っても、ショップキーパー(店主)は後から来たセトラー(ベンガル人入植者)である。ジュマの人たちは道ばたにむしろを敷き作物を広げ地面に座り、強い日差しにさらされながら売っているのである。

BOBショップ(バンク•オブ•仏陀の店)はその格差をなくすためのシェルターだ。ブッダバンク受益者とその地域の人たちが作物を届け、その道に長けた専属のスタッフによる公平な取引を推進する。さらにブッダバンクの基地としてワークショップなどを開きジュマの人たちの理解の場所ともなる。

もちろん実現に向けてさまざまな問題があるだろう。だがこういう土地こそが、最も求められているのである。

僕達は村の住人と真剣に耳を傾け、意見交換をした。

バングラディシュに来た目的の一つは、このBOBショッププロジェクトの可能性を探り、可能ならスタートにのこぎ着けることも視野に入れている。

余談だが、バングラディシュ政府これまでいたるところでジュマ民族の村を破壊し強奪。陸軍の駐屯地を建設してきた。

2005年からは、CHT(広陵地帯)への入植政策を推進するため、広陵地帯で暮らすベンガル人入植者のみを対象に「無償食料支援」までしている。その数6万5千家族。

同じ国民だろうに

…そもそもこんな理不尽な事、ほっといていいのか…

Vol.6『チャンドラバングシャ僧侶とアラカン族のスーラン』

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