2009 セカヘイ・ワークショップでの決定事項
(CSの今後の取り組みと方向性)について
CSセカヘイでは、全員参加型のワークショップでの討議を通して、行動計画を練り上げておりますが、
まず、今後の取り組むべき3つの方向性として、
1)Self-sufficiency・・・自給(自足)
2)Dharma Practice・・修行(唱題、瞑想など)
3)Autonomy・・・・・自治
が確認されました。
1)は、農業(自然、有機)、林業、水産業の第1次産業分野及び水車や風車等の適正技術を活用した環境負荷をかけない生活の確立(地域自給)
2)は、内面的と外面的の両方に亙った自己覚醒の奨励。教育分野。(例えば、世界の構造的暴力や地球環境問題の中で自分がいかに生き、他者にどう働きかけるべきかの法体験や法話を通じた気付き)
3)は、国家(近代国民国家)を括弧入れして、同じ人間(或いは同じ仏教徒) としての国境を越えた共同体の形成。特に情報(通信)と流通の第3次産業分野。
極めて簡潔に整理すると以上のようになるかと思いますが、これらは相互に連関しているもので、1)~2)~3)と、それぞれ「仏」「法」「僧」に配分することも可能のように思われます。
CSに特異的な点は、3)で、
パワー・ポリティクス(力の国際政治)やグローバリゼーション(新自由主義的な弱肉強食の経済)が形成している現代の国家単位の世界のパワー・バランスそのものを、仏教(宗教)という脱(超)国家的な倫理領域からさらにバランスする。そういう大戦略(バランシングによる世界平和)を持っているところです。
また、1)に連関して、我々にはAIM(Appropriate technologies International Movement)という強力なパートナーNGOが存在していることも特記すべきでしょう。
この他、英文の方では、比丘尼問題を特記しておりましたが、御存知のように、タイ、ビルマ、カンボジア、ラオスでは比丘尼の存在自体が認められていません。CSでは、それぞれの歴史的背景故のそのような事態と捉え、しかし、CSでは比丘尼も共に活動することを通して、やがて比丘尼の存在意義というものをそれらの社会に伝えていこうということに結論しています。
尚、これに加えて、この度、斉藤大法上人が新たに医療分野からの取り組みを開始されています。
NGO等に見られる人道主義的な支援活動は、その内容と時期の点で以下の3つに区分されます。
1)Emergency Relief Project
2)Rehabilitation Project
3)Sustainable Project
1)は、サイクロンや地震、水害、旱魃等の自然災害や内乱等によって難民が発生した際の緊急事態の時期。
2)が、1)の状態が落ち着いてきた頃に、人々が本来の生活(生業)に戻るまでの復興期。
3)は、その地で持続的・継続的な生活(生業)を営むに足る安定期。
極めて簡潔に整理すると以上のようになるかと思いますが
具体例を挙げると、昨年よりビルマで行っているCSのプロジェクトがあります。
1)サイクロン被災者への食糧配給。その他の物資支援。
2)耕運機の配布支援。(農耕用の水牛が死滅してしまったため、緊急に農耕を行う必要がありました。)
3)水牛(牛)銀行。(農耕用の水牛の育成と配布)
或いはカンボジアでは、
1)食糧配給(緊急支援)
2)仏陀の池、仏陀の道の建設
3)米銀行、仏陀銀行
となります。
さて、何故わざわざこれを記したかと言いますと、実は、先に上げたCSの3つの方向性(Self-Sufficiency, Dharma Practice, Autonomy)は、いずれもこのうちの3)Sustainable Projectに該当していることを確認したかったからです。もちろん、だからと言って、Emergency Relief やRehabilitation をしないという訳ではありません。
災害は降って湧いてくるように発生しますので、それはそれで臨機応変な対応が必要です。
ここでは、特に重要なのは、3)Sustainable Projectであり、これなくしては「Autonomy」も「バランシング世界平和戦略」も在り得ない。そういうことです。
さてさて、そこで、これら3つの方向性を磁石のように繋げるものとして提案・実行されているのが「仏陀銀行」で、例えば、カンボジアでは、個々の自立のために小規模融資を無利子で貸し付けていますが、その返済方法や返済期間について、CSのスタッフや僧侶等が親身になって相談に乗る。
そこに、2)Dharma Practiceや3)Autonomyへの効用も自然と付加されてくる。
一方で、小規模融資の受益者(希望者)は必ず世界市民通貨(BD)を利用するメンバーにもならなければなりませんが、このBDが、他の地域通貨と比べて特異な点は、それがすべてのBDコミュニティーで、つまりは、すべてのCSコミュニティーで、使用することができるという文字通りの世界市民通貨である点です。これが国際的にも合法的であることは、セカヘイのLETS講義でも確認されたところですが、このBDの使用もまた、1)Self-sufficiency、2)Dharma Practice、3)Autonomyへと自然と連関する。そのような仕組みになっています。
例えば、カンボジアのCSセンターでは、毎月の法要日(25日)に、BDフリーマーケットを開催することになっていますが、(この7月25日より開始)そのマーケットを通して、1)Self-sufficiencyや3)Autonomyへの自覚と実現が図られていくと同時に、法要に出席する僧侶(各派に派遣を要請)・仏教者・宗教者によって、2)Dharma Practiceも行われる。そういう段取りになっています。と言いますか、そういう段取りにしたんです。(笑)
この2)Dharma Practiceには、上座部各国各派はもとより皆さまにも是非ご協力頂きたいと思っておりますので、どうぞよろしく御配慮のほど、謹んでお願い申し上げます。
ASEANの会議(軍とCSOによる非公式会議)について
去る6月7日~9日に亘って開催されたASEAN会議の結果、
CSは、ASEAN公認のCSO(Civil Society Organization)として、
サイクロンや津波、地震等の等緊急救援の事態が発生した際に、
ASEAN各国(ビルマを除く)の軍と協力して緊急救援を行うことが承認されております。
このステータスが今後どのように活きてくるかは未だ分かりませんが、一応ご報告ということでお伝えしておきます。
穏健派のチャンパ族イスラム教団(Kan-Imamsan)との連携について
カンボジアでは、穏健派のチャンパ族イスラム教団(Kan-Imamsan…本部、コンポンチュナム州)とも連携することとなり、来年のセカヘイでは行動を共にする運びともなっております。
来年のセカヘイは、マハチャイの上座部寺院を会場にワークショップを開催する予定ですが、その場にこのイスラム教団のボス(Kai Tam師)を招待致します。非常に温和で包容力のある方です。
また、日程がすでに決まっているところでは、5月30日(日)に恒例となったアランでの平和行進が行われますが、カンボジア国境に近いので、今年CSカンボジア・スタッフ全員がアランに参加したようなかたちで、可能な限りのイスラム教徒を招待し、一緒に行進・法要を行います。
また、アランの一般参加者が、CSのことを良く理解していないという反省点がありましたので、来年は、アランでもワークショップを設け、一般住民・学生参加者に対して、CSの目標や目的について説明することになっています。
現在、このKan-Imamsanより、米銀行と仏陀銀行(名前の変更も求められていません)を本部のあるコンポンチュナムで開設して欲しいとの依頼を受けておりますが、来年のワークショップではこの辺の課題(連携方法)について討議することになると思います。
このパイプが出来たことで、他のイスラム教徒とも連絡を取ることが可能となっておりますが、私自身は、このパイプを通じて、タリバン等の所謂イスラム過激派と言われる方々にもチャンネルを作り、彼等にCS乃至非暴力の仏教徒運動へのシフト・連携を対話・要請し、彼等自身の世界性の獲得と、暴力の前に為す術もないまま幾多の貴重な人命を失うばかりの非暴力活動に、新たな変容をもたらす起爆剤となっていけるか吟味を続けながら慎重に図っていきたいと考えています。
CSスリランカの開設について
ここ2ヶ月のうちに現在タイに在住しているスリランカ僧侶のダンモーダヤが、大学教授としてスリランカに戻り、そこでCSスリランカを開設し、他のCS同様の地域開発プロジェクトを始めるとのことです。
開設に当たってはCS・Japanとしてもそれなりの対応をすべきと思っておりますが、まずは本人からの連絡を待ちたいと思います。
CSベトナム・CSオーストラリアについて
以下、オーストラリア在住のモニカ・ルー比丘尼との往復メール、及び、UBCVのPenelop女史からとの間で今後の方針を検討中です。
その他について
この5月27日~6月5日にかけて行いました世界同時平和法要(セカヘイ)については、
タイに9カ国の僧侶・仏教者が結集し、6月4日には台湾、カルクイム、モンゴル、日本にて有志による開催の運びとなりました。そして、6月3日にタイのステージが終了した後、各国にミッションを派遣して、セカヘイを継続開催しましたが、小生は今回はインド・ミッションに参加し、ムンゴットのチベット人定住地に赴き、デプン寺にてセカヘイを行ってきました。
ミッションには私の他、四方僧伽メンバーから
アシン・ヴァヤマ(ビルマ亡命僧、CSビルマ代表)、チャンドラ・バングシャ(ジュマ僧侶、CSバングラデシュ)の他、タイ人の比丘尼等3名、
及びタイに来ていたチベット僧侶、Lobsang Norbu Shastri師の合計7名。
デプン寺にはおよそ4,000名のチベット人僧侶が参加し、
四方僧伽(以下、CS)メンバーのLobsang Norbu Shastri師、geshe Lobsang Phelgye師(セラ寺)等がコーディネーターとして活躍して頂きました。
デプン寺(Drepun Laci)では、6月5日にセカヘイを開催し、
早朝4時よりキャンドルを手にしたチベット僧侶が集まり、現地の代表と共に4時半からCS各国メンバーの短いスピーチと読経。
その後、チベット僧侶による朝勤となり、全員で参加。大変な荘厳さでした。
その後、ムンゴット定住地の有機農業試験場を視察し、ちょうど世界環境デーだったこともあり、定住地の大ホールにて開催された住民参加の大きな集会にゲストとして参加。その後、現地代表や現地のNGOsと一緒にワークショップを持ち(デプン寺)、CSの各国での取り組みについての説明等、
今後の協力方法等について話し合いを致しました。
以下、その結論を簡略に記しておきます。
【セカヘイについて】
1)来年のセカヘイ(インド・ミッション)も、ムンゴット定住地にて行う。
2)開催場所は、今度はダンカン寺。
3)次回は、ダンカン寺の僧侶だけでなく、デプン寺等の地元の諸寺院やセラ寺からも僧侶・尼僧が参加、さらに現地の一般住民も参加する。
4)カルクイム共和国(ロシア連邦)、モンゴルについては、CSチベットが主導的にプログラムを調整する。
【今年のタイのセカヘイのワークショップにて決まった事柄に関連して】
5)今後の平和的なデモ活動(人権、環境)等について、ビルマ亡命僧侶やジュマの僧侶をはじめとするアジア各国の仏教徒等と連携行動していく。
6)持続可能な社会作りと仏教徒によるオートノミーの形成については、特に農業技術・適正技術の技術交換・交流を行う。
7)その目的で、インド在住のチベット人をタイ(カンボジア)に派遣する。
8)今年は、8月20日から先進地であるタイにて、マッシュルームの栽培技術研修とビルマ人亡命社会の見学。
9)その後、カンボジアにて水車技術、仏陀銀行の見学と運営方法の研修を予定。(8,9については、今年は、バイラクッペから1名が参加)
10)チベット人定住地での仏陀銀行の開設を目指す。