2008年度:世界平和法要レポート

1.はじめに

日本の本化仏教徒から始まった四方僧伽(運動)の「世界同時平和法要」(通称:セカヘイ)は今年で3回目を迎え、参加者の出身国も12ヶ国(日本、台湾、ベトナム、カンボジア、タイ、ビルマ、バングラデシュ、インド、スリランカ、チベット、モンゴル、ロシア連邦カルクイム共和国)となりました。参加国数は1年目に3ヶ国、2年目には6ヶ国と、その数も年毎に倍化しています。
この活動は、四方僧伽(運動)の諸活動の中でもとりわけ大きな目玉となるもので、その目的は全世界において戦火紛争や恐怖政治、または人災により葬られた人々、そして地震・津波・洪水・旱魃・飢饉・疫病等の天災により命を絶たれた一切の死者の魂を悼み、安らかなる成仏得道への追善を、世界中の仏教徒が一丸となって年に一度、同じ日(6月4日)に、それぞれの場所から一斉に回向し、さらに未だ戦乱の続く諸地域や天災からの復興途上にある人々の一日も早い復興と平和を祈願するものとして行なわれています。
現在、アジア~ヨーロッパ各国に主要な7つのステージを設けて参加を募っていますが、参加を希望する方は、自分のいる場所で自発的に参加することができます。
その一方で、セカヘイでは、この期日に合わせ、各国の仏教徒が集い、共に祈り、共に語り合い、共に新たな行動を起こす為のワークショップを兼ねた平和行進のステージも設けてきました。今年は、タイの首都バンコクにて一同が集い、タイ国内で平和行進やワークショップを行った後、カンボジア組とインド・チベット組の2組のミッションに分かれ、カンボジア国内各地やインドのチベット難民定住地等でそれぞれ平和行進を行ないました。参加総数は延べ人数にして10万人を突破しています。今年の各地での成果は、以下の報告で詳述致します。
グローバリゼーションに見られる物質文明の飛躍的な発展に伴い、いまや世界中の人々は、国籍を超えて相互に密接に繋がり合い、良しに付け悪しきに付け相互に影響を与え合う時代となりました。しかしながらグローバリゼーションによって齎された自由経済の波は世界規模で富める者と貧しき者の格差を増大させ、地球規模で発生している温暖化等の環境問題も、もはや人類全体の問題として認識を新たにすべき時を迎えています。
その中にあって、草木の仏教徒が声を同じくして立ち上がったことは、たとえ大海の一滴に過ぎないわずかな出来事ではあっても、その意義は確実に有ると考えています。その声とは前述した「人類全体の問題に対する共通の危機意識」であり、もうひとつは「仏教徒として行動する上での価値規範の共有」です。後者は少しく説明が必要ですが、後に改めて解説致します。
四方僧伽(Catuddisa Sangha以下、略してCS)の運動は、このセカヘイを機縁として、国籍や宗派の異なる仏教徒同士が相互に触発・変容し合いながら、これまでは日本や台湾が他国(カンボジアやチベット難民等)を(具体的には環境に適した循環的な生活を取り戻す為の農村開発や適正技術の推進、将来を担う次世代の子供達への教育活動等を通して)支援するという、先進国から途上国への援助という従来よく見られるような形態を取ってきました。しかし、今年のセカヘイでは、CSタイが独自にカンボジアの農村開発に乗り出し、一方CSカンボジアは活動によって独自に生み出した資金(米銀行の利潤金で、通常は井戸の建設や道路整備等、米銀行を置く村のコミュニティー改善に使われているものです)をCSバングラデシュ(特にジュマの少数民族)に提供し、さらにCSが拠点を置く各国各地の仏教徒(ないし賛同者)が、一同にビルマ(特に先のサイクロン被災者)の救援に乗り出すなど、CSが本目的としてきた「仏教徒コミュニティーによる国境を越えた相互扶助社会の形成へ」という大きなターニング・ポイントの段階に入ってきました。特筆すべき成果として、ここに報告する次第です。

四方僧伽日本事務局 代表 井本 勝幸

2.目的

全世界において戦火紛争や恐怖政治、または人災により葬られた人々、そして地震・津波・洪水・旱魃・飢饉・疫病等の天災により命を絶たれた一切の死者の魂を悼み、安らかなる成仏得道への追善を、世界中の仏教徒が一丸となって年に一度、同じ日(6月4日)に、それぞれの場所から一斉に回向し、さらに未だ戦乱の続く諸地域や天災からの復興途上にある人々の一日も早い復興と平和を祈願する

※今年のスローガン「仏教はいかなる勢力に対しても、その敵となるものではない」

声明文(5月30日、FCCT記者会見にて表明)

1.仏教とは道理(を説く宗教)であり、古来より普遍の人倫の寄る辺であり真理(妙法)の源泉である。仏教がその行為に於いて非暴力を執り、真理(妙法)への謀反に対して非妥協であるのはそのためである。したがって、仏教は政治そのものではないが、如何なる政治体制を採る国家であれ社会であれ、そこに道理や人倫に悖る行為が行われるならば、その誤った行為を諫言し正そうとするのは仏教徒の使命である。それは国家安泰の為であって、国家への反体制でもなければ反逆でもない。むしろ仏教はそれぞれの国家の国民全員の安泰と繁栄を促す点に於いてこの上ない政治の味方であり、同時に誤った政治に対するこの上ない審判である。仏教はいかなる勢力に対しても、その敵となるものではない。「四方僧伽」は、今日、仏教徒への弾圧と迫害、国外への追放を強めている諸国家、殊にその政治指導者達に対しこの点に対する賢慮を廻らし、即刻にも仏教を(それぞれの国にあった)本来の状態に戻すべきことを進言する。また、現在も迫害を受け続けている仏教徒に対し、各国仏教徒が手を携え、総力を挙げて惜しみない支援を行うことを表明する。

2. 四方僧伽は、諸外国に於ける人道支援のみに止まらず、仏教徒間に於ける国境を越えた分配をその布施の中から行うことで、少欲知足の仏法に則りつつ衣食住に関わる(人間の)最低限度の生活の保障を図る仏教徒共同体として、近代国民国家体制の世界に仏教による「もうひとつの自立圏」を実現していくことを表明する。それは、グローバリゼーションの浸透によって構造化された貧富格差等の諸問題を、現状のままに引き受けつつそれを変容していくことを可能とする唯一必然な「もうひとつのグローバリゼーション」であり、各国内に根深く存在している貧困層や社会的弱者の生活レヴェルの向上によって国家の安泰を導く点に於いても、世界平和実現への具体的な提案である。

3.世界の仏教徒に対し、四方僧伽への自発的な賛同と協力を求める。

以上

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